長野地方裁判所 昭和56年(行ウ)2号 判決 1981年5月28日
長野県中野市大字深沢四六九番地一
原告
山口実
右訴訟代理人弁護士
佐藤豊
同市中央一丁目五番二〇号
被告
信濃中野税務署長
田中成敏
右指定代理人
布村重成
同
中村正俊
同
六馬二郎
同
山本宏一
同
曲淵公一
同
藤田亘
同
江口育夫
主文
一、本件訴えを却下する。
二、訴訟費用は、原告の負担とする。
事実
第一、当事者の求めた裁判
一、請求の趣旨
1 被告が昭和五三年七月一〇日付でなした原告の昭和四九年分所得税を一六万二、五〇〇円とする決定及び無申告加算税を一万六、二〇〇円とする賦課、昭和五〇年分所得税を四二万八、八〇〇円とする決定及び無申告加算税を四万二、八〇〇円とする賦課、昭和五一年分所得税を一三一万八、〇〇〇円とする更正及び過少申告加算税を六万五、九〇〇円とする賦課の各処分(以下本件各処分という。)は、いずれもこれを取消す。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
二、被告の答弁
主文同旨
第二、当事者の主張
一、請求原因
被告は、昭和五三年七月一〇日、原告に対し、本件各処分をなしたが、右各処分は不服であるからその取消を求める。
二、被告の主張
本件訴えは、法定の出訴期間を徒過して提起されたもので、不適法である。
すなわち、原告は、本件各処分につき審査請求をなしたが、これに対しては、いずれも昭和五五年八月二八日棄却の裁決を受け、同裁決書の謄本の送達を同年一〇月一三日に受けたのであるから、原告において同日右裁決があつたことを知つたものと言うべきものであるところ、行政事件訴訟法一四条一項、四項によれば、取消訴訟は裁決があつたことを知つた日から起算して三ケ月以内に提起すべき旨規定され、なお、この場合期間は初日を算入すべきであるから、本訴は遅くとも昭和五六年一月一二日までに提起すべきであるのに、同月一三日に提起されたものであつて不適法である。
三、被告の主張に対する答弁及び原告の反論
原告が昭和五五年一〇月一三日に前記裁決があつたことを知つたという事実は認めるが、行政事件訴訟法一四条四項所定の出訴期間の算定においては、初日は算入すべきでなく、したがつて、本件訴えは出訴期間内になされた適法なものである。
第三、証拠関係
一、原告は、甲第一号証を提出し、乙第一号証の一、二の成立を認めた。
二、被告は、乙第一号証の一、二を提出し、甲第一号証の成立を認めた。
理由
一、まず、本訴が出訴期間内に提起されたか否かについて検討する。
本訴は、審査請求を経た後に提起されたものであるから、その出訴期間については行政事件訴訟法一四条が適用され、その期間計算については同法条四項によるべきところ、その初日は審査請求に対する裁決があつたことを知つた日又は裁決があつた日とし、これを期間に算入すべきものと解するのが相当であり(最高裁判所第一小法廷昭和五二年二月一七日判決)、これと別異の解釈は当裁判所のとらないところである。
二、しかるところ、本件各処分に対する原告の審査請求については、その棄却の裁決書の謄本が昭和五五年一〇月一三日原告に送達され、同日原告が右裁決があつたことを知つたとの事実は当事者間に争いがなく、また、本件訴えが昭和五六年一月一三日に提起されたことは記録上明らかである。とすると、本件訴えは、原告が前記裁決があつたことを知つた日から起算して前記法定の三箇月の出訴期間を経過した後に提起されたものと言わざるをえない。
よつて、原告の本件訴えは不適法として却下し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 安田実 裁判官 松本哲泓 裁判官 小池喜彦)